にっぽん怪虫記・ネジレバネ(小松貴、新潮社「波」20年1月号)

新潮社のPR誌「波」に新たな連載が始まった。「にっぽん怪虫記」の著者は、国立科学博物館勤務の昆虫学者だ。「現在は毎日ほとんど好き勝手に、そこらで虫の研究をして過ごしている。肩書きとしては国立科学博物館という所に属する協力研究員という立場だが、これは無給ポストであるため、生活は妻に頼りきっている。名実ともに完全なヒモだが、妻は私の良き…
コメント:0

続きを読むread more

血族の王(岩瀬達哉著、新潮文庫)

「松下幸之助とナショナルの世紀」が丹念に描かれている。裏表紙には「米相場で破産、没落した家名を再興すべく、松下幸之助は九歳で大阪へ丁稚奉公に出た」とある。11歳で一家の大黒柱になった運命に対して、幸之助は懸命に闘った。「事業拡大への飽くなき執念は、妻と始めた家内工業を従業員38万人の一大家電王国へと成長させた」のだ。昭和に活躍した評論家…
コメント:0

続きを読むread more

ダウントン・アビー

この作品の主人公は、秀抜な美術と撮影だ。冒頭、バッキンガム宮殿からダウントン・アビー宛ての封書が送られる。郵便汽車から郵便車、さらには郵便バイクによってその封書が届けられるのだが、その映像だけでも素晴らしい。CGではない、大きな絵柄の美しい実写が冴えわたっている。広壮な屋敷の中の装飾品、食器、壁にかけられる絵画など、人物よりも傑出し…
コメント:0

続きを読むread more

パラサイト

対立する富裕層と貧困層。映像的に二つの階層を描くためにポン・ジュノ監督が取り上げたのは、ソウルの高台にある豪邸と、坂下にある半地下住居。象徴的なのは、叩きつけるような豪雨が高台から坂下へと、滝のように流れ落ちる場面だ。高台の豪邸にはまるで被害のない豪雨も、濁流となって坂下の貧しい町を沈めてしまうのだ。黒澤明監督の「天国と地獄」では、…
コメント:0

続きを読むread more

家族を想うとき

原題は宅配業者が残す不在票に記される常套句「いつもご利用頂きまして有難うございます」の英文だ。邦題は、作品の中で主人公の息子が万引きで逮捕された時に警官が息子を諭す場面から引用されている。中年警官は高校生の息子の目をまっすぐに見つめて言う。「よく聞け。君は今、重要な岐路に立っている。まっとうな人生に戻るんだ。家族は君のことを大切に想…
コメント:0

続きを読むread more

イエスタデイ

「謎の世界的大停電が起きた後、人類はビートルズの記憶を失っているんだ!」と、誰かが思いついて、この作品は生まれたのだろう。脚本はリチャード・カーティス。監督はダニー・ボイル。英国風味たっぷりのコメディーファンタジーだ。中学校の音楽教師だったジャック(ヒメーシュ・パデル)は、幼馴染で数学教師のエリー(リリー・ジェームズ)の献身的なマネ…
コメント:0

続きを読むread more

CIAスパイ養成官~キヨ・ヤマダの対日工作(山田敏弘著、新潮社)

 2010年に米国でひっそりと亡くなった88歳の日本女性には隠された顔があった。その女性、山田清(きよ)は、1968年から2000年まで、CIA(米国中央情報局)の日本語インストラクターだった。驚くのは、彼女が働き出したのは46歳からで、CIAを去ったのが77歳だったということだ。CIAには定年がなく、必要とされる人材なら高齢まで働ける…
コメント:0

続きを読むread more

男はつらいよ お帰り寅さん

観終わった観客の意見、想いはそれぞれだろう。サブタイトルは「お帰り寅さん」となっているが、個人的な感想では「さよなら寅さん」に近いだろう。寅さんシリーズの最後の2本撮影時に渥美清さんが体調を崩されていて、寅さんのクローズアップからは最盛期の闊達な明るさが消え、表情は硬いままだった。今回の作品で数多く挿入されている寅さんの過去の映像には、…
コメント:0

続きを読むread more

テッド・バンディ

27歳から数年間で30人以上の若い女性を殺害して逮捕され、裁判中に恋人と結婚をし、彼女との子供を残して、テッド・バンディは43歳の時に電気椅子で死刑となった。ジョー・バリンジャー監督のこの作品の白眉は、ラスト近くの刑務所での対決だ。面会所のアクリル板を挟んで、テッド・バンディ(ザック・エフロン)と、彼を愛し、警察に通報したことに深い…
コメント:0

続きを読むread more

スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け

ジョージ・ルーカスからディズニーへと渡されたスターウォーズシリーズは、J.J.エイブラムス監督が手がけた「フォースの覚醒」で新たなシリーズとなった。創造された新しいキャラクターの中でも、レイ(デイジー・リドリー)とカイロ・レン(アダム・ドライバー)に大きな活躍の場が与えられてきた。カイロ・レンは、父親のハン・ソロを冷酷非情にライトセ…
コメント:0

続きを読むread more

カツベン!

トーキーと呼ばれた“フィルムに音と声が入った”映画が上映される前には、無声映画にステージ上の楽団と弁士が音と声を付け加えていた。映画が活動写真と呼ばれていた時代の物語を、周防正行監督が面白くまとめている。脚本は助監督の片島章三が担当している。大正時代の物語なので、セットを組んだ時代劇と同じ作りになっている。活動弁士華やかな時代、弁士に憧…
コメント:0

続きを読むread more

屍人荘の殺人

原作には書かれているが、映画化作品では省略されている部分がある。蒔田光治の脚本は、主人公の葉村(神木隆之介)と剣崎比留子(浜辺美波)を中心にして物語を展開させているが、情報が欠けている。ロックフェスティバルで異変が起きたのは、邪悪なカルト集団がウイルステロを起こしたためだが、これははっきり描くべきだろう。また、犯人の動機は復讐だが、…
コメント:0

続きを読むread more

カリ・モーラ(トマス・ハリス著、高見浩訳、新潮文庫)

「ハンニバル」「羊たちの沈黙」の作家が13年ぶりに出した新作だ。今年79歳になる作者は、1975年に記者から作家となり、48歳の時に「羊たちの沈黙」を発表し、原作、映画ともに世界的ヒットとなった。「カリ・モーラ」は、「ハンニバル・ライジング」から13年後の作品だが、以前の作品とは違っている。主人公は、表題のカリ・モーラだが、この25…
コメント:0

続きを読むread more

獅子文六展

神奈川近代文学館で「没後50年・獅子文六展」が開かれている(20年3/8まで)。獅子文六の作品はちくま文庫で今も出版されていて、シリーズ累計25万部突破というから驚きだ。獅子文六は、明治26年に横浜で生まれた。父親は裕福な貿易商だったが、9歳の時に亡くなり、母親も27歳の時に亡くなっている。慶応義塾大学時代に19歳で懸賞小説に入…
コメント:0

続きを読むread more

ラスト・クリスマス

ロンドンを舞台にしたクリスマスらしい愛の佳作だ。前半30分を観て、ヒロインのケイト(エミリア・クラーク)に感情移入できる観客は少ないだろう。母親と姉が嫌いだからと、キャリーバッグを引きずってあちこちの友人の家に転がり込み、失敗を繰り返しては追い出される。酒場で知り合った男のアパートに転がり込んでは、セックスと引き換えに宿泊を頼む。少…
コメント:0

続きを読むread more

ファイティング・ファミリー

似たようなスポーツや芸術をテーマにしていても、イギリス映画はハリウッド映画とは一味違う。事実を基にして英国のプロレス一家を描いた「ファイティング・ファミリー」は、家族の物語だ。父親は暴力沙汰で服役し、出てきたところで自殺未遂の麻薬女と出会い、ひと目ぼれする。父親はこの女と再婚して長男、長女をもうけるが、“銀行強盗とは縁を切って”プロ…
コメント:0

続きを読むread more

THE INFORMER

冒頭から緊迫感漂う演出に圧倒される。主演のジョエル・キナマンが鬼気迫る熱演を見せるほか、情報屋を操るFBI捜査官の冷酷さ、部下を殺されたニューヨーク市警の刑事の執念など、見所満載だ。ポーランド移民の両親を持つ米国人のコズロー(ジョエル・キナマン)は、妻に絡んだ男たちと諍いになって殺し、服役していた。イラク戦争で狙撃兵をしていたコ…
コメント:0

続きを読むread more

アナと雪の女王2

ヒット作の続編は面白くならないのが常識だが、これは違う。前作「アナと雪の女王」から5年。脚本家は素晴らしい成果を見せている。前作で簡潔に描かれていたアナとエルサの父母の謎が解ける。両親が船旅に出て、海難事故で亡くなったというエピソードも、意外な形で再生される。この作品で最も重要視されたのは、「エルサはなぜ氷の魔法を授かったのか?」だ…
コメント:0

続きを読むread more

野鳥俳壇19年12月(日本野鳥の会・会報「野鳥」掲載)

* 特選 草刈りや案山子に似たる鷺一羽    愛知県・丸岡正彦さん 【選評・辻桃子】畦の草刈りをしていると案山子のような鷺が一本足で立っていた。じっと立っている鷺に作者は俳味を感じたのだ。 * 入選 鳥を待つ九月の沼の真つ平ら    静岡県・岩崎武士さん 【選評・辻桃子】野鳥観察によく行く沼なのだろう。波のない水面の静…
コメント:0

続きを読むread more

ルノワールとパリに恋した12人の画家たち

BS日テレの「ぶらぶら美術」で、山田五郎氏がユーモラスに解説していたように、横浜美術館で開催されている「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」の主人公は、これらの絵を収集したポール・ギョームだ。20世紀初頭のパリで、自動車修理工だったギョームが、偶然にも目にしたアフリカ彫刻に魅了されてコレクターに転身し、画商として成功しながら、…
コメント:0

続きを読むread more