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zoom RSS 警官の血(佐々木譲、新潮文庫)

<<   作成日時 : 2019/04/19 16:05   >>

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吉野仁氏の解説によれば「佐々木譲の代表作といえるばかりか、国産警察ミステリー史の新たなページを拓く名作だ」とある。2007年度の「このミステリーがすごい!」の第1位など高い評価を受けて、テレビドラマにもなった。物語は、昭和23年の東京から始まり、平成19年で終っている。主人公は3人、安城清二、その息子の民雄、孫の和也だ。戦争直後から始まる親子3代にわたる警察官の物語の中で、最も読者を引きつけるのは、民雄だろう。跨線橋から謎の転落死を遂げた駐在所勤務の清二は、殉職とはならず、自殺扱いされてしまっていた。同期の3人の警察官がそれに同情し、民雄を支え、民雄は高校を出て警察官となる。だが、成績優秀の上に警察官を父に持っていた民雄には予想外の警察官人生が待っていた。警視庁公安部のスパイとなって北海道大学の過激派の動向を探れという密命だった。作者は北海道在住の長所を活かして、北大を選んだに違いない。学生として北大に潜り込み、過激派の学生たちと接触し、大菩薩峠の山岳訓練に参加し、その情報を上司に伝えていく姿は、まさに手に汗握るサスペンスだ。佐藤栄作首相の訪米を阻止するための暴力闘争を阻止できるのか、民雄の情報は警視庁公安部にとっても重要なものだったのだ。当時の学生運動の過激さと、政治の動向が濃密に描かれている。だが、読者にとって衝撃だったのは、その後の民雄の姿だ。過激派学生に混じって、警察官である本当の自分を隠し続けた民雄には深い心の傷が残り、不安神経症患者となる。その治療施設で知り合った女性と結婚するのだが、結婚生活の描写も読者には辛いものとなる。民雄のトラウマは癒えきれず、深酒をしては妻や子供を殴る夫となってしまうのだ。ようやく民雄が落ちつくのは、父と同じ駐在所勤務になってからだ。母親を殴る父を見て育つのが、3人目の主人公、和也だ。駐在所勤務になって民雄の暴力も治まり、ようやく平凡な幸せが訪れた安城家に見えたが、そこにも破綻が訪れる。少女を人質にして立て篭もった男の拳銃が、民雄を撃ち殺す。だが、それはまるで自殺だったかのように描かれる。「これは罰なのだ、と民雄は思った。自分の生の締めくくりにふさわしい罰。すでに許しを請うこともできず、償うこともできぬ自分の罪には、この罰が下される以外には帳尻は合うまい。自分はこの罰を拒まない。抗わない。自分がすべきはただ、この罰を黙って受け入れることだ」と記されている。公安のスパイとなって、大きな手柄を立てたものの、心を病んで暴力を振るう夫、父親になった民雄が抱えていた暗闇は、作品の最後で明かされる。その民雄の長男、和也も大学を出て警察官になる。和也もまた、密命を下される。警務部のスパイとして、捜査4課の“汚れた刑事”加賀谷係長の違法捜査を報告せよと。だが、この捜査にも作者は辛いエピソードを盛り込んでいる。和也が知り合った消防署の女性救命士との交際の中に、加賀谷が手を出してしまうのだ。覚醒剤を使っていた加賀谷は、この女性救命士と夜を明かした後で逮捕される。和也は、加賀谷と恋人を売ったのだ。ラスト近くで、和也は祖父の死の秘密を知る。そして、その秘密を武器に、自分の仕事を進める。捜査二課の主任となった和也が、祖父から譲り受けたホイッスルを鳴らす場面で物語りは終る。

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