ラスト・クリスマス

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ロンドンを舞台にしたクリスマスらしい愛の佳作だ。前半30分を観て、ヒロインのケイト(エミリア・クラーク)に感情移入できる観客は少ないだろう。母親と姉が嫌いだからと、キャリーバッグを引きずってあちこちの友人の家に転がり込み、失敗を繰り返しては追い出される。酒場で知り合った男のアパートに転がり込んでは、セックスと引き換えに宿泊を頼む。少女の頃に歌がうまかったケイトは、歌手のオーディションを受け続けるが、いつも落選。落ち込んでは酒を飲み、男とつかの間の愛を交わすような毎日だ。勤め先は、クリスマスショップ。中国人の女性店主からも文句を言われて、解雇寸前。誰が見ても、厄介な25歳だ。だが、これはすべて後半のために描かれている伏線だ。母親役で出演しているエマ・トンプソンとグレッグ・ワイズが書いた原案を、エマ・トンプソンとブライオニー・キミングスが脚本にしているが、とてもよく計算されている。この物語には、重要な謎が隠されている。その謎を握っているのが、トム(ヘンリー・ゴールディング)だ。トムは、最初の出会いで「上を見ろ」と言うが、これにも意味がある。ロンドンの街の隅々には動物たちの絵柄が隠されているが、上を見ないとわからないのだ。トムは誠実で品行方正な青年で、ケイトとは正反対だが、これにも意味がある。トムは、荒れた毎日を繰り返しているケイトに、良いことをすれば良い人になれる、と言う。ケイトは、トムに誘われるように小さな良いことを重ねるようになるが、トムとは連絡が取れなくなる。トムは携帯を持たず、“棚に置いたまま”にしていると言うのだ。これにも意味がある。すべては、終盤に劇的に明かされる。“病気だった”というケイト。その病気の治療の後、ケイトは自分が誰だかわからなくなったと言う。そこに全ての秘密が隠されているのだ。トムが普通の青年ではないことは、やがてわかってくる。トムは何者なのか。ミステリアスな興味も深まっていく。優れた映画は、主人公が変わっていく映画だと言われるが、この作品こそ、ヒロインのケイトが劇的に変わる素晴らしいコメディーだ。

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