一度も撃ってません(20年公開・DVD)

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この作品の脚本で、丸山昇一は毎日映画コンクールで二度目の脚本賞を受けた。企画・監督の阪本順治の原案を、丸山昇一がまとめたものだろう。75歳になる小説家の市川(石橋蓮司)は、妻の弥生(大楠道代)と都内の一軒家に二人暮らし。立派な家で、整った暮らしをしているが、市川の収入で暮らしてきたわけではなく、教員だった弥生の才覚で暮らしてきたのだ。弥生は何事もきちんと、前向きに生きていく女性。それと対照的な女性が、元ミュージカルダンサーの玉淀ひかる(桃井かおり)。手の震えるマスター・ポパイが営むバー「Y」には、市川やひかる、元検事の石田(岸辺一徳)が集まるが、それぞれに関係がある。新宿が騒乱に明け暮れていた時代、ひかるは大学生だった市川、石田と出会い、それぞれの人生を生きてきたのだ。ひかるは舞台から去った後、うどん屋で働いているし、石田は検事時代に不祥事を起こして、今は汚れた仕事を請け負っている。石田が請け負うのは、暗殺だ。それを頼む相手が、市川。市川は、自分では一度も銃を使ったことがないが、ポパイに暗殺を依頼し、ポパイが辞めた後は、今西(妻夫木聡)に依頼してきた。市川は暗殺の度にその時の実感を取材し、それを小説にして馴染みの編集者に送ってきたが、時代遅れのハードボイルド小説は、一度も出版されないままだ。投資詐欺で稼いできた男(江口洋介)を暗殺した後、ヤクザが動き、市川が疑われ始めた。「御前零児(ごぜんれいじ)」と名乗り、「酒が夜を呼んでくる」とハードボイルドに生きてきた市川が、名うてのヒットマン(豊川悦司)に狙われるはめになってしまうのだが・・・。登場人物たちの関係がよく練られている。若い女性バーテンダー(井上真央)がいる店が何気なく出てくるが、その女性が石田の娘だとわかり、娘は決して父親を許さないという。また、夫の正体を知らずにきちんとした教師として生きてきた女性として描かれている弥生が、夫の正体を知ってしまい、ひかると飲み明かす場面はとても面白い。夜の世界に生きる男を演じてきた市川も、所詮はただのヒモだったわけだ。安川午朗のジャズもよく活きて、かつて輝いていた男や女たちの過去にしがみつくような生きざまが、コミカルに描かれている。

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