運び屋

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今までにスクリーンで見たクリント・イーストウッドの姿と違い、さらに老いた印象が強い。主人公のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)の年齢が90歳という役柄なので、丁度いいのだろうが、曲がった背中が寂しい。とはいえ、この作品のアールは、陽気な元軍人で、老人なのに女に目がない。晩年は美しい百合栽培で成功して、同業者からも一目置かれていたが、ネット販売に負けて農場を売りに出してしまう。金に困ったアールだが、仕事優先で家族を犠牲にしてきたアールに、元妻(ダイアン・ウイースト)も娘も冷たい。娘の結婚式にも出なかったアールは、娘から無視されてしまう。そんなアールに舞い込んだのが、麻薬の運び屋稼業だ。メキシコの密輸業者と絡んで、すっかり運び屋になっていくアールは、転がり込んだ多額の報酬で退役軍人会館を建て直したり、孫娘の学費を払っていく。90歳の老人を咎める警官もなく、仕事は続いていたが、麻薬取締局から次第に目をつけられていく…という物語。イーストウッド監督が映画化に踏みきった理由は、この物語が実話に基づいているからだという。実際に米国で起きた事件を素材に、娯楽映画に仕立て上げたものだろう。主人公が90歳なので、老人の外観と人生経験を十分に活かして、警官の職務質問からユーモラスにするりと逃げる場面が見せ場になっている。朝鮮戦争に従軍した元兵士だから勇気もあり、友人も多いという人生だ。うまくいかなかったのは、家族との関係で、作品の中には何度も「家族が一番だ」という後悔じみた台詞が出てくる。最後に逮捕されて法定で裁きを受ける場面があるが、アールは潔く全ての罪を認める。そんなアールを娘も孫娘も励ます。刑務所送りになって初めて、アールの家族関係は良好になったといえるだろう。人生は神のみぞ知る、である。

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