愛しのタチアナ(95年公開・DVD)

itosino.jpgフィンランドのアキ・カウリスマキ監督によるモノクロ作品だ。母親と二人で暮らすバルト(マッティ・ペロンパー)は、自宅でミシンを踏む裁縫師。とにかくコーヒーが好きで、いつもコーヒーを飲んでいる。仕事中にコーヒーが切れたことで母親に激怒して、個室に母親を閉じ込めたまま、家を出て行く。ここから先の物語が、バルトの夢想によるものか、実際の体験なのかは観客に委ねられている。バルトは車の修理工・レノイ(キルシ・テュッキュライネン)と二人であてのない旅に出かける。バルトは背広姿。レノイは、ロッカー気取りだ。レノイは酒瓶を離さず、バルトはコーヒーを手放さない。途中のバーで、パンクして動けないバスに出会う。乗客の二人の女が、バルトとレノイを見て言う。「見なさいよ、あのマヌケ面。二人に港まで送らせるわ」こうして、ロシア女のクラウディアとエストニア女のタチアナ(カティ・オウティネン)は、バルトとレノイの車に乗り込むのだ。二組の男女が、安ホテルに泊まり、食事をして、3泊かけて港まで辿り着く姿を描いているのだが、ロマンティックな場面があるわけでもない。4人はほとんど笑わず、会話もない。煙草を吸い、コーヒーを飲み、酒を飲む。ホテルでは何もなくただ、寝て過ごす。男女が部屋を共にしても、何も起きないのだ。男二人はただ、眠ってしまう。ただ、わずかに起きるのは、レノイとタチアナへのかすかな好意。港から船が出て行くが、男二人は船に乗る。タリンの町でクラウディアは去っていくが、タチアナは男たちの車で自宅に向かう。タチアナの家に着いた時、レノイは言う。「おれはここに残る。作家になる」いきなりの台詞だ。酒のみの自動車修理工が、エストニア女の家に転がり込んで、作家になるというのだから、驚きだ。何の理由もない。バルトは車に乗って家に戻る。途中、コーヒー屋でロック歌手のテレビを見て、妄想が浮かぶ。家では、出て行く時のままだ。閉じ込めていた母親を解放し、煙草をくわえてミシンを踏む。今までできなかった何かをバルトは果たしたのだろうか。それも、観客に委ねられている。

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